合宿内容

夏合宿を終えて2019
 合宿に来る前、いろんなことを考えた。
 
 都新人に出場可能なレベルの部員がいること、合宿でこれまでの練習のリズムが崩れてしまって逆効果になるのではないか。
 峰の原高原も年々暑くなってきていて、安全に練習できるとは言えない環境なこと。
 来年はオリンピックと重なるため、バスなどを借りることが難しく、新幹線なども予約できるかどうか見通しが立たないこと。
 合宿をしないで練習を継続した方が大会にスムーズに入れるのではないか。

 ここに来て、君たちの成長ぶりを目の当たりにして、
 やっぱり合宿は合宿なんだなと改めて実感させられた。
 普段あまり話す機会のない先輩と後輩が寝食を共にすることで新たな絆を作り、これまであまり気にすることがなかった別ブロックの練習を応援するようになる。
 会話が増え、笑顔が増える。
 思い出は加速度的に増えていく。
 部員たちの多くが、誰かのために走ることの意味を実感し、一人で走るよりも頑張れることを学んだ。
 陸上は孤独なスポーツ。
 走るときは誰の力も借りられない。
 それでも、陸上部で走ることには別の意味がある。
 隣を見れば、つらいことを共に乗り越えようとする仲間が必ずいる。
 その光景は心に刻まれ、いざ一人で走る舞台に飛び出したときに、自然と目に浮かぶ。
 一人で走っていても、共に走っているんだ。
 駅伝、4継では走った先に仲間が待っている。
 共に過ごした時間が、
 その思い出の密度が濃ければ濃いほど、
 待っている仲間のもとに最高の自分で辿り着きたいという気持ちは強くなる。
 そのために、今日を頑張ろうと思うようになる。

 先輩たちは言っていた。
 合宿は駅伝が近いと実感させられると。
 駅伝のために頑張らなくてはいけないと。
 澤部さんは言っていた。
 早く引退したいと。
 でも、その本当の意味は、早く部活が終わってほしいということではなく、これまでの自分が本当に頑張ってきたから、都駅伝で得られる達成感がどれほどのものなのか、その時見られる景色がどれほどのものなのかが楽しみでしょうがないという意味だった。
 僕が常日頃言っている、描いている最後の景色の話と一緒だった。
 きっと誰もが、その景色に辿り着きたくて、周りからすると理解できないような努力を積んでいるのだと思う。
 果たして、君たちには描けているだろうか。
 希望の先の景色が。

 1年生へ
 君たちの成長ぶりは圧倒的だった。男女ともに歴代最強の世代になることは間違いない。今はそう感じられないかもしれないが、僕が言うことに今のところ間違いはない。だから頑張れ。
 2年生へ
 全体的に意識がどんどん高くなってきている。仲間との雰囲気もとてもいい。都大会レベルにあるメンバーと、そうではないメンバーの意識の差を埋めていくこと。言われなくてもわかっているはず。安達や、松井、松浦がそれを教えてくれたはずだから。
 3年へ。
 君たちと共に夢を追いかけられる日々もあと89日。出会った頃は一人ひとりのベクトルが全く違う方向を向いていて、とてもチームになれるとは思えなかった。様々なつらいことを乗り越え、良いチームになった。澤部の言っていたことは、毎年感じている。別れがくることはわかっていても、それでもやはり楽しみで仕方がないんだ。誇れる息子と娘たちと迎える最高の都駅伝を。
 
 今回の合宿では、ファンタイムさん、リミニさんに大変お世話になりました。
 また、部員たちのまとめでも感謝の言葉が出ていましたが、保護者の方々のご理解・ご協力なしにはできませんでした。
 改めて御礼を申し上げたいと思います。

 また、植竹先生という最高のパートナーに巡り合えたことの頼もしさを実感する合宿でした。名だたる名監督には必ず素晴らしいパートナーがいます。強くなるために、ずっと僕に欠けていたものでした。植竹先生というピースが揃い、もう何も言い訳ができなくなりました。

 そして、最後に。
 初めてマネージャーが入ってきた時、最初の選考会が都大会予選選考会だった。3年の想いのかかった選考会。計測ミス。あの時、言った言葉を撤回する。
 君たちがいなかったら、今回の合宿は成立していなかった。
 仮にこのチームの成長に僕が必要なのだとしたら、同じくらい必要なのが君たちだった。
 ずっと願っていたこと。
 僕があと何人もいればいいのに。
 その叶うはずのない願いを、君たちが叶えてくれた。
 君たちがいなかったら、何段階も強度を下げた練習にしなくてはならなかった。
 それくらい、危険で、難しい環境の中の合宿だった。
 その怖さを、君たちは僕と共有してくれていたと感じている。
 そのことに感謝している。
 選手たちのように、大会の結果で自分たちの頑張りを証明できるものではない。
 僕に褒められることもない。
 それでも頑張れているのは、選手たちとは違い、僕と同じ気持ちだからだろう。
 陸上部が成長すること、選手が結果を出すことが、まるで自分のことのようにうれしくて仕方がないから頑張れる。
 そんな風に思える人は珍しい。
 僕自身、自分のことを変わっていると思っている。
 普通じゃない。
 君たちも、やっぱり変わってる。
 僕は感謝がされたくてやっているわけではなくて、僕がやりたいからやっている。
 君たちもきっとそうなのだろう。だからやはり感謝はしない。
 共に、陸上部を強くしよう。
 最高の景色が見られるように。
 
 これまでずっと、次の年にはもっと良いチームになって帰ってくることを誓っていた。
 でも、今年はもうしない。
 明日、朝が来たら起きる、などと誓う人はいないだろうから。
 



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